2016年度吹奏楽コンクール課題曲解説資料

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作曲者・西村友先生による楽曲イメージ解説

(4/24 課題曲クリニック プログラムノートより/ブログ等で既に公開されているものから、さらに最新版)

今年の3月頃のこと。
ある幼稚園の子供たちが劇をやる、と言います。

最近の劇は、お姫様が7人だったり王子様が6人だったり、まあ、いろいろありますようで。

しかしその幼稚園の子供たちはそれを良しとせず、自分たちで物語を、脚本を作る、と言うのです。

幼稚園生にそんなのできるの?

いえいえ、なめたもんじゃぁありません。
みんなで試行錯誤しながら作ったお話は、なかなかによくできたお話でありまして。

みんなで力を合わせて作った物語、「虹の国と氷の国」
どんなお話かと申しますと…

あるところに「虹の国」と「氷の国」がありました。
ところが二つの国は、「僕らの国の方が楽しいよ」「いやいや私たちの国の方が幸せだわ」、といつも喧嘩ばかり。
「だめだよ、みんな仲良くしよう!」と、両方の国でみんなを説得するのは、みすぼらしい汚い服を着た男の子。
しかし皆にいじめられます。「なんだい!汚い服で!」「なんだか臭いわ。あっちへ行って!」

ある時、魔法使いが現れます。
「二つの国で一緒に力を合わせて、『虹色の氷』を手に入れないと、国は二つとも滅んでしまうよ」
虹の国と氷の国では大騒ぎ。
それぞれの王子様とお姫様が国の人たちにお願いして、『虹色の氷』捜索隊が出発します。
様々な冒険の末、最後に行く手を阻むのは恐~いドラゴン。
虹の国も氷の国も大ピンチ!

そこに現れたのが、あの汚い服の男の子。
身を犠牲にしてドラゴンとたたかいます。
二つの国も力を合わせて戦って、やっとドラゴンを倒します。
しかし、汚い服の男の子はドラゴンの最後の一撃にやられてしまいます。

「ごめんよ…」「僕らが悪かった…」とみんなが泣いていると、魔法使いが現れます。
「みんな、仲良くすることの大切さがわかりましたね」
「はい…でも、この男の子が…」
「さあ、ここに宝箱があります。開いてごらんなさい」

宝箱には鍵穴が二つ。
虹の国と氷の国のみんなは、それぞれの鍵を差し込みます。
するとそこには『虹色の氷』が!
そして魔法使いが虹色の氷のかけらを汚い服の男の子の口に入れると、
まばゆい光が男の子を覆い、次の瞬間、汚れた服は真っ白に変わり、それはそれは立派な王子様が立っているではありませんか!

それから二つの国は仲良く、新しい王子様と共に末永く暮らしましたとさ。

子どもたちが作ったとは思えないほどのクオリティ!(まあ、上記のお話は少し僕が脚色していますが…)
悪者が全く出ないとか、微妙に「あのお話」が匂うとか、疑問が解決されない、とか最後に王子様とお姫様がくっついて欲しい、とか大人としては思ってしまう部分もありますが、そこは子供たち。
その純粋さにかえって感動してしまったのでした。

その上演には既存のいろんな曲をBGMとして使うといいます。
折角みんなで作ったんだから、オリジナルで!、と、僕が勝手に作ったのが「虹の国と氷の国」への付随音楽。

全部で30曲ほどの小さな曲たち。
コンピューター音源の簡単な録音で。
そしてその素材を集めて3分ほどの序曲も作りました。

その序曲の中には氷の国のお姫様や虹の国の王子様や、魔法使いや動物たち、いろんな音が登場します。
それを聴いた子供たちは「これ僕の音だ!」「これ私の音~!」
わずかなモチーフを見つけて純粋に喜び、飛び跳ねるのです。
…こんなに嬉しいことはない…(byアムロ)
素直な耳と心に感動しちゃったのです。
自分もこの心を忘れたくない、と強く思ったのでした。

でも、序曲はちょっと長すぎる…とのこと。
幼稚園のお遊戯会ですからね、仕方ない。
OKOK、ちょっとカット。
まだ長い?…よし、カット。
なになに、まだ長い…?

と言うわけで最終的には10秒ほどになってしまいました。
でもまあ、せっかく書いたから、と言うわけで上演に使われなかった曲を中心に再構成して吹奏楽曲「ある英雄の想い出」(※原文ママ)が出来上がったのでした。

吹奏楽の為の序曲として生まれ変わったこの曲。
前述の「虹の国と氷の国」の少年のお話をベースにはしていますが、全く別のお話を創ったり想像したりして構わないのです。
「”ある英雄”についての想い出」なのか、それとも「”ある英雄自身”の想い出」なのか、演奏する人、聴く人がそれぞれ自由に自分だけのお話を創り上げてください。

兎にも角にも、英雄も苦難も、それぞれのみんなの心の中にあり、それぞれが本当で本物。
そして、「ある英雄」についての記憶なのか、それとも「英雄本人」が語る記憶なのか、来年演奏してくれる皆さんそれぞれの、素敵な「記憶(想い出)」を作ってほしいと思います。

ちなみに欧題の「The legendary tale of a brave heart」はアメリカ暮らしの長かったオペラ歌手塚本伸彦さんが考えてくれました。ありがとう~!

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